地酒紀行7 精鋭が揃う酒造りの島  佐渡

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 佐渡島新潟県にある、沖縄本島に次いで日本で2番目に大きな島だ。人口は約67,000人。毎年過疎化が進んでいる。平成16年に島内10の市町村が合併し、佐渡島全体で佐渡市となった。面積は855.25㎢で、全国に783ある市の中で、広さでは37位と、かなり大きいほうに属する。ちなみに日本一広い市は岐阜県高山市、小さいのは埼玉県蕨市だ(2007年5月現在)。

 佐渡には日本酒の醸造蔵が6社ある。

尾畑酒造株式会社(佐渡市真野新町449)   代表銘柄:真野鶴 与三作
逸見酒造有限会社(佐渡市長石84-甲)     代表銘柄:真稜
佐渡銘醸株式会社(佐渡市加茂歌代458)   代表銘柄:天領
株式会社北雪酒造(佐渡市徳和2377-2)     代表銘柄:北雪
有限会社菊波酒造(佐渡市吉岡813-1)    代表銘柄:菊波
有限会社加藤酒造店(佐渡市金井新保1120-2)  代表銘柄:金鶴

 尾畑酒造は平成13年から18年まで、全国新酒監評会で6年連続金賞を受賞した。また、世界最大規模のワインコンテスト、「インターナショナル・ワイン・チャレンジ2007」でも金賞を受賞し、全国に名の売れた銘柄だ。
 逸見酒造は、佐渡で唯一山廃による醸造を行っている。また、平成11・12年度の全国新酒監評会で金賞を受賞している蔵だ。
 佐渡銘醸は全国新酒監評会で5年連続金賞受賞、国際酒祭り世界第1位、全国酒類コンクール全国第7位など、数々の受賞歴を誇る名醸造蔵。
 北雪酒造は昭和50年代の地酒ブームの時に辛口で名を馳せ、海外にも販路を拡大している。
 越乃寒梅、雪中梅、峰乃白梅の三銘柄が「越乃三梅」と呼ばれていることをご存じの方も多いと思うが、〆張鶴、越の鶴、金鶴を総称して「越乃三鶴」というそうだ。「金鶴」は隠れた名酒として、知る人ぞ知るお酒らしい。菊波酒造にも受賞歴がある。
 このように、佐渡にある6社は揃って実力蔵であり、佐渡のホテルや飲食店で出されるお酒のほとんどは佐渡のお酒で、地元の人にも愛されているようだ。

 今年は夏休みを利用して、2泊3日で佐渡旅行に行った。メインは佐渡金山などの名所観光だが、足を伸ばして佐渡銘醸、逸見酒造、尾畑酒造にもおじゃましたので、そのときの様子をレポートする。

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 「真野鶴」の尾畑酒造は、酒蔵見学を通年受け入れている。団体客の見学ルートになっているらしく、広い駐車場に観光バスが乗り付けてくる。ただし、酒蔵見学といってもビデオを3分くらい見て、あとは流れ作業のようにお酒と物産品を買うだけで、酒造工程や酒蔵の見学はない。訪問した日は出荷等の作業がお休みだったため、稼働していれば瓶詰め、ラベル貼りなどの様子を見学できたのかもしれないが。しかし、酒蔵見学と銘打っている以上は、タンクや圧搾機の見学、酒造米の紹介など、もっとやりようがあると思った。
 いずれにしても、自社の酒造りについてお客さんに知ってほしい、日本酒のすばらしさをアピールしようという意識は希薄なようだ。

 佐渡の酒造場は、6社のうち4社(真野鶴・真稜・金鶴・菊波)が真野・佐和田地区に集中している。自動車なら30分程度でまわれる距離。このうち見学を受け入れているのは真野鶴、真稜の2社だ。

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 「真稜」の逸見(へんみ)酒造は明治元年創業で、佐渡では老舗の醸造蔵。突然おじゃましたのに「酒蔵見学をしますか」と言ってくださった。本来なら予約しなければならないので、ご迷惑と思い遠慮したが、昔ながらのたたずまいで、ちょっと興味ある建物だった。

 佐渡銘醸は昭和58年創業だが、昭和40年に柴田酒造場と高橋酒造(江戸中期創業)が合併し、昭和58年に現社名となったものだ。佐渡銘醸の近所に、柴田酒造場の建物がまだ残っていた。当時は「加茂川自慢」「千両」という銘柄だったらしい。
 佐渡に着いた初日の夕方、佐渡銘醸を訪ねた。

 「いらっしゃい」と気さくに対応してくださったのは社長さんだった(と思う)。

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 まず、精米機を見せていただいた。2基ある。自家精米は良い酒を造るための基本だと思うが、この規模の蔵で2基あるのはすごい。大吟醸を造るときは、右側の精米機(サタケ社製)で、熱を上げないよう風を送りながら何日もかけて精米する。米ぬかにも需要があって、煎餅の原料になったり、田んぼに戻して土壌改良に使ったりするそうだ。

 佐渡銘醸の意気込みが感じられるのが、新潟県で最初に導入された密閉式仕込みタンクだ。魔法瓶のような仕組みになっているので、外気温を心配することなく醪の温度管理ができる。貯蔵・温度管理用の蔵が必要ないため、タンクが屋外に設置してある。このタンクのおかげで、全国新酒監評会で5年連続金賞受賞を達成した。

 佐渡銘醸に資料館はないが、戦後から昭和末年頃まで使っていた、一時代前の酒造り用具が展示してあり、実際にそれらを使って酒造りをしていた社長さんは、懐かしそうに、一つ一つの使い方を実演してくださるのだった。

 桶は手を使わずに担ぐとか、瓶の洗浄や殺菌の仕方などを教わって、とても勉強になった。
 試飲コーナーでは、いろんな商品を飲ませ(食べさせ)ていただいた。といっても私は自動車を運転していたので、飲んだのは家内。最高級酒のYK35をはじめ、国際酒祭りで1位を獲得した大吟醸、他にも甘酒や酒まんじゅうもいただき、家内はほくほく顔だった。甘酒は夏の飲み物だそうで、確かに天領盃の甘酒はさっぱりしていて、この時期にふさわしいと感じた。酒まんじゅうも、酒粕の香りが心地よくて、とてもおいしかった。

 皆さんも佐渡に出かける機会があれば、佐渡銘醸にお立ち寄りください。わたしは運良くアポ無しで見学させていただきましたが、予約しておくと確実です。

<2007年8月23日記>