地酒紀行4 沖縄で唯一、日本酒を造る蔵元

黎明4号瓶

 

 現在、日本酒を製造していない県が1県だけある。というと、多くの人は沖縄県を想像することだろう。たしかに沖縄は泡盛王国で、酒蔵は48社もある。また、気候・風土も日本酒づくりに適さないわけだから、日本酒がないと考えるのは当然だ。
 ところが、30年以上前から頑なに日本酒を造り続けている蔵がある。会社名を泰石(たいこく)酒造という。創業者の安田繁史氏は、長崎黎明酒造と技術提携を結び、清酒「黎明」を開発した。仕込み樽と貯蔵タンクの周囲に冷水を回し、酒温度を15度以下に保つことで、南国沖縄で酒造りはできないという定説を覆したのだ。
 8月3日、炎天の具志川市に泰石酒造を訪問した。静まりかえった工場では、蔵元のご家族だろうか、ご婦人とおばあさんが二人で事務を執っていた。清酒醸造蔵とはいえ主力は泡盛なので、山積みされているのは「はんたばる」と印刷された泡盛段ボール箱だ。
 日本酒は工場の3階で醸造し、別棟の1階にホースで流して瓶詰めする。事前に予約をしなかった上に工場が休みだったため、作業の様子やタンクの状態などを見学することができず、残念だった。
 泰石酒造が製造している日本酒は「黎明」本醸造のみだ。4合瓶を796円で購入した。かなり安い。品質については記載がないため不明だが、20年くらい前の新潟清酒を、もう少し強い口当たりにしたような味といえばわかってもらえるだろうか。ちょっとコクのある、キレの良い辛口という感じだった。
 酒屋や土産物店に売っているかと思ってずいぶん探したが、「黎明」を出している店舗は見つからなかった。日本最南端、そして沖縄唯一の日本酒なのだから、もう少し脚光を浴びてほしいものである。
 ちなみに、日本酒を製造していない県は鹿児島県(※)が正解。
※現在は、薩州正宗というお酒が造られています。

<2002年8月4日記>