地酒紀行1 鶴齢と鈴木牧之

鶴齢純米酒のラベル

 鈴木牧之(すずきぼくし)は越後の国魚沼郡塩沢の人で、明和7年(1770)年に生まれ、天保13年(1842)年、73歳で没している。家業は縮(呉服の反物)仲買業で、塩沢地域随一の商家だった。滝沢馬琴山東京山など、江戸の文人と親交が深かったが、牧之の名を不朽にしたのは、彼の著作「北越雪譜」である。豪雪地域の風俗を描いたこの本は、天保8年に出版されるや大評判となった。雪国の風俗と人情を、エピソードを交えてこまやかに描写した本書は、文章も平易で、現代の私達が読んでも十分楽しめる傑作だ。岩波文庫などに収められている。
 「鶴齢」の蔵元、青木酒造は、上越線塩沢駅から徒歩3分、昔ながらの造り酒屋のたたずまいである。鈴木牧之記念館で鈴木家の系譜を見ると、確か牧之の息子が青木家の養子になっている。鈴木家と青木蔵元家は親戚同士なのだ。
 「鶴齢」純米酒、4合瓶を1200円で買った。新潟の酒らしく淡麗でのどごしさわやか。上等なできばえで、おいしくいただいた。ラベルには「北越雪譜」の挿絵が使われている。蓑笠を着けてかんじきを履いたおじさんが、飲んべえに向かって笑いかけている図柄である。
<1990年8月6日記>